スピーチとスポーツは、驚くほど共通点が沢山あります。特に大きな共通点は、「緊張」と「力」です。一流の人は、「力の抜き方」も一流です。今回は水泳の池江璃花子選手を例にお話いたします。

 

一流こそ、脱力の本来の意味を知っている

水泳のアジア大会2018で、池江璃花子選手が4種目で金メダルを獲得するという快挙を成し遂げました。
彼女は、約1週間前に行われたパンパシ水泳で100mバタフライにて日本新記録で金メダル、200m自由形でも日本新記録で銀メダルを獲得したばかりです。

スピーチと水泳はものは違えど付随してくる、緊張感や力を最大限に発揮するという点においては、同じと言えるでしょう。さて池江選手のように、ここぞという場で結果を出せる一流の人は、一体何が違うのでしょうか。それは、競技終了後に池江選手が発した言葉に答えがありました。

 

「今回は力を抜く事が出来、表彰で会場を歩き回ったお陰で、緊張もなかった。」
(2018年8月20日TBSテレビ:インタビュー時)

 

この言葉のポイントは、「力を抜く事が出来た」という点です。プールでプカプカ浮いた経験がある人ならご存知かと思いますが、水の中というのは、力めば力むほど沈みます。前に進むことは出来ません。

一流のスイマーにとっての脱力とは、

●緊張からくる力みをどれだけ取り除く事ができるか
●必要最低限の緊張感と力というのは、どの程度なのか

の2点を知る事と言えます。勝敗を決める大きな要因なのです。これは、スピーチにおいても全く同じ事が言えます。

 

力んだ状態でスピーチをすると、何が起こるか?

 

まず、力んだ状態で話を始めると、スピーカーは緊張をコントロールする事が出来なくなります
呼吸は浅く、動機も速く、顔も強張るでしょう。この状態で聴衆の前に出たら、どうなりますか?

聴衆は恐らくこう感じます。「緊張されているなぁ」と。そして無意識的にこう感じるでしょう。「息がつまる、こちらまで緊張してくる」と。人間は相手の緊張を、「肌」「空気」で感じ取ります。

一生懸命話そうという気持ちは十分に伝わりますが、聴衆にとって心地良いものではありません。心地悪く感じている状況に、あなたは居続けることは出来ますか?恐らく答えはNOでしょう。

「力み」と「力強さ」は、似て非なるものです。「力み」とは、体が硬直している状態で、意識的にコントロールが不可能な状態のこと。「力強さ」は、緩急・抑揚がある中でスピーカーが意図的にエネルギーがある人間に見せようとしたり、聴衆がパワーを感じている状態のことです。

意識的に脱力が出来ていないければ、スピーカー本来の力が発揮されることはありませんし、脱力している状態が、どんな体の状態なのかを分かっていなければ、脱力することも出来ません。

 

スポーツを楽しみながら、緊張した時、どこに力みが出るのかを把握する

 

社長の趣味のトップは「ゴルフ」であるとのデータがあります。(東京商工リサーチ)また、大企業の社長の趣味第3位には「スポーツ」がランクインしています。

スポーツをする経営者が多いのは、健康管理、経営者同士のコミュニケーションの場としての活用、常にベストな状態を保つ、という理由が挙げられます。経営者は会社の総指揮。体の状態について拘るのは、ごく当たり前のことです。

ここに、「脱力した体」を意識下に埋め込むということも追加する事で、本番に強いスピーカーになれる要素を取り入れるのです。

スピーチは、聴衆の前に立ったときに、いかに脱力する事ができるかが勝負です。体の力みが取れれば、頭もクリアになり、ハリを出そうとと絞り出してしまっていた声も、伸びやかに響くようになります。

スポーツを楽しみながら、自分の体はどこが緊張しやすいのか?緊張するとどんな姿勢で、どんな表情で、どんな気分なのか?を観察・分析してみてください。日常的に力みをとる訓練をしておくと、いざとなった時に無駄な力みを取り除く事ができるようになります。

あなたは普段、どんな時に、どんな風に、脱力していますか?

 

【参考サイト】
東京商工リサーチ「130万人の社長データ」